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企業家列伝シリーズ第四弾 『僕のリバティ・トリップは終わらない』

小説「企業家列伝シリーズ」第四弾

『僕のリバティ・トリップは終わらない』を本日より Kindle ストアで発売します。

 

今回の主人公・中浜秀紀は、高校を卒業してすぐに渡米します。

その理由が大変ふるっているのですが、日本にいるときの僕は、何となく抜け殻のような気がするというのです。いつになったら僕は本気になるのか、どうすれば本気になれるのか、「本物の自分」はどこにいるのか、それを知りたい秀紀は、大好きなハリウッド映画をみていて、「アメリカに行けば僕は何とかなる」と思い始めるのです。環境が変われば、自分は自分らしくなれる。そう信じたわけですが、アメリカに行っただけでは自分らしくなれないことにあとから気づきます。

秀紀の父は学生時代に空手をやっていて、そのつながりでアンデス赤石という大変有名なステーキレストランのオーナーを知っていました。秀紀はNYの赤石の家で家事手伝いをしながらコックの修行を始めます。「将来のうちの幹部だ」「一生面倒をみてあげる」と赤石に言われます。夜間の英語学校に通って英語を勉強したら、次はアメリカの大学に行って MBA も取る。その間にコックの腕前も磨く。アンデスは秀紀のために完ぺきなプランを用意して待ってくれていました。

秀紀と同世代の職人仲間は、やっかみから秀紀をいじめるほどです。

恵まれた環境を与えられた秀紀なのですが、周囲が良かれと思って完ぺきなレールを敷いてくれると、かえって嫌になってしまいます。秀紀が幼いころから地元・串本で夢みてきたのは、自由の国・アメリカ、自己責任の国・アメリカです。若くして億万長者になることもできれば、ホームレスになってどこかで野垂れ死にし、無縁仏になるかもしれない。体をはった、ぎりぎりの紙一重の勝負に挑んでいくからこそ人生もビジネスも面白い。勝ちが見えてる勝負にはまったく魅力を感じない秀紀でした。

NYで秀紀を悩ましたものはもうひとつあります。料理人という職業、あるいは、その職人世界でした。手先が不器用な秀紀にとって、料理が苦手でした。調理実習も全然楽しくないのです。

「俺のように、料理人にならずとも経営者にはなれるから」とアンデスに励まされます。がんばろうと何度か挑戦しますが、料理人には料理人の縦社会や上下関係というものがあり、当時のそうした閉鎖的な社会にもなじめなかった秀紀は日々、気分が鬱していきます。

そんな秀紀が、ついに、ある出来事をきっかけにしてアンデスの家を飛び出してしまいます。向かったのはNYの恋人の家でした。

やがて秀紀は、無気力ではない自分、自分が本当に溌剌となれる自分を見つけます。それは恋人と向かったある場所のある仕事でした。

そのあたりから少しずつ、抜け殻のようだった秀紀が本物の秀紀に目ざめていくわけです。秀紀のモデルは今年 52歳ですが、17歳の秀紀少年が、アメリカに渡って様々な挑戦と苦闘を描いた 41歳までの物語です。その人生を「リバティ・トリップ」(自由への旅)と題しましたが、それは秀紀が物語のなかで付けた会社名でもあるのです。

武澤 信行の「企業家列伝シリーズ」はこれで四作目となりました。

・2月発売「ウオダイ物語」 34,000文字 紙の本換算 50ページ
・3月発売「アジアの小太陽」(上) 35,000文字 紙の本換算 50ページ
・4月発売「アジアの小太陽」(下) 43,000文字 紙の本換算 56ページ
・5月発売「僕のリバティ・トリップは終わらない」 57,000文字 紙の本換算 81ページ イラスト 5点入り

「企業家列伝シリーズ」は今後も更に続きますが、6月は趣向を変えて、すこし娯楽色のある新ジャンルの小説に挑戦してみるつもりです。

uodai hyoushi

企業家列伝シリーズ第一弾 『ウオダイ物語』

uodai hyoushi

《内容》
港で仕入れた魚を大八車で引き売りする商売を始めたのが初代の代吉(だいきち)。二代目の孝夫(たかお)が野菜を覚え、三代目の千博(かずひろ)が肉を覚えた。これで「魚・野菜・肉」が揃う食品スーパー「ウオダイ」の完成である。ここまでに半世紀の歳月を要した。親子孫の三代で完成させたビジネスは、地域になくてはならない店になっていく。そして千博とその家族、多くの社員やパートタイマーを豊かにした。
だが、バブル経済崩壊後の長びくデフレやリーマンショック、それに過激な競争環境がウオダイと千博をむしばんでいく。よもや、五十を過ぎてから「ウオダイ」を廃業し、鮮魚市場でネコ引き(荷物運び)の仕事をする覚悟までせねばならないとは…。そこにはいったいどんな浮沈の物語があったのか。

[easingsliderlite]

《作者より》
この小説は実話をベースにしました。登場人物も店名も主人公関係者はすべて実名です。この『ウオダイ物語』は、一人の男のサクセスストーリーでもなければ、痛快活劇でもありません。むしろ、悩み多きビジネスマンの格闘記といえそうなものです。責任感が人一倍強い主人公・千博(かずひろ)は、心配性のところがあります。愛する女性へのプロポーズに成功しても、「俺は本当に彼女を幸せにしてやれるだろうか?」と、すぐに心配を始めるような主人公。そんな男性が三代目社長として激動のスーパー業界でどのような経営をしていくのか、というところにスポットを当てました。会社経営は人生をかけた大変な冒険と挑戦であり、ときには身体と心をむしばむものでもあります。同時に、支えあう仲間の存在や、大切な人が残してくれた「言葉」によって困難に立ち向かう強さも勇気も出てきます。
この親子孫の三代にわたる物語を書きながら私は、企業は時代とともに生きていることをあらためて実感しました。時代が要請するものを企業が提供できれば存続と発展が許され、そぐわなくなれば、おのずと企業は衰退し、消え去る運命にあります。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」とダーウィンが『種の起源』で説いたことがビジネスでも起きています。しかも、変化は一瞬たりとも止まりません。
むしろウオダイと加藤社長を取りまく環境は、ますます激しさを増す可能性があります。しかし、何度もピンチを迎え、そのつど対応し、乗り越えてきたウオダイは少しずつ強くなってきたはずです。いや、確実に強くなったことでしょう。これからは社長ひとりでなく、幹部を中心としたチームで問題にぶつかろうと、会社の方針を「経営計画書」に仕上げた、発表会も行いました。その計画書は、三代目・千博から四代目に託されるバトンでもあるはずです。

さて、私にとって小説デビュー作となる本作品は、すべて手さぐりのなか、一気呵成に書き上げました。そんな実験作のような小説のモデルになっていただいた加藤社長ならびウオダイ関係者の皆さま、そして本作品をダウンロードしようとされているあなたに心から感謝いたします。

小説 企業家列伝 一.「ウオダイ物語」

《目次》
1.安く買って安く売れ! 高く買っても安く売れ
2.初代・祖父 代吉
3.二代目・父 孝夫
4.三代目 千博
5.「カクダイフード」
6.レイエンスイ処理
7.突然の契約解除
8.スーパー「カプリオ」
9.伊豆原専務
10.活きた金
11.圭子
12.躍進
13.急ブレーキ
14.メインバンク
15.吐血
16.暁光
17.店が生きてる
18.宣言!「ウオダイは生まれ変わります」
19.新・ウオダイ
20.飛翔
21.はじめての発表会
22.作者あとがき

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小説 企業家列伝 一.「ウオダイ物語」
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uodai hyoushi
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  •  【立ち読みコーナー】「ところで千博、君はあと一年ちょっとでウオダイに戻るんだろ」
    「ええ、そのつもりです」
    「じゃあ言っておいてやるが、お前なんかが家業を継いだら百パーセント失敗するぞ」
    「……」
    「倒産する、と言ってるんだ」 千博はなにを言われているのか理解できなかった。ついさっきは「よくやっている」とほめてくれたではないか。いったいどういうことだろう。「俺の言っている意味がわかるか?」
    「すいません、ちょっと、わかりません」
    「お前なんか、うちの社員とおんなじサラリーマンだ、という意味だ」
     すでに二六歳になっていた千博。もうすぐ後継者としてウオダイに戻る。専務はそんな千博に経営者意識が欠けていることを指摘した。仕事は一生懸命やっているにちがいない。だが、内心では休日や休憩を楽しみにし、夜遅くまで働いていると時間ばかりが気になってくる。残業手当の計算も気になる。要するにサラリーマン根性丸だしである、と専務は指摘した。「お前はいつまでも雇われ人の意識で仕事をやっとる」
    「そうですか?」
    「そうですかってお前。じゃあ聞くがな、なんでお前は夜寝るときに家へ帰るんだ?」
    「……」
    「八百屋だったらスイカの上で寝るもんだろ。そんなに布団がいいか?」「……」
    「それにな、お前はうちの社員よりレベルが低いぞ」
    「私のレベルが低い? いったいなぜでしょう?」
     千博はこの際、何でも言って欲しかった。むしろ厳しくされた方がありがたいとも思った。
    しばらく寿司をほおぼった二人だが、次に専務の口から出た言葉は千博にとって青天せいてん霹靂へきれきだった。
    「あのナンパ車を売れ」
    「え?」━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  • 「社長を辞めようと思う」
    「ちょっと何いってるのあなた。しっかりしなきゃ」
    「俺じゃウオダイを引っぱっていけん」
    「お店はどうするのよ」
    「俺がおってもおらんでも売上は一緒や。長男と次男に任せる」
    「しっかりしてちょうだいよ、まだなにひとつ線を引いてやってないのに、ここであなたがさじを投げたら社員も子ども達も途方にくれるばっかりよ」
    「そんなことないやろ」
    「そうなの。あなたがいなきゃみんな困るのよ」
    「まあええわ。ちょっと俺、頭を冷やしにドライブでも行ってくるわ」

    圭子は千博から生気がまったくなくなっているのを感じて不安だった。ひとりにしておかないほうがよいと思ったが、「ちょっと会ってみたい友達もいるし」と千博がいうので留守番することにした。
    業績が悪いことや金がないという問題は何とかなる。いままでもそうしたピンチを何度もくぐりぬけてきて免疫もできている。だが、万策尽きたという経験はかつてない。今度ばかりはどのような手を打とうが業績は改善せず、客の反応がまるでない。そこにウオダイと千博たちが存在しないかのように世間から無視されることの切なさ、無力感、脱力感。生きていても意味がないように思える。なにひとつ明るい希望がもてない。
    なかば放心状態の千博がクラウンで向かった先はホームセンターだった。
    「どのロープにしようか」
    店員に聞くわけにはいかない。千博の身体を支えられる丈夫なロープでなければならない。あまり太すぎると自分の首からすり落ちてしまう。あれこれ物色し、結局、直径二センチほどの船舶用ロープにした。色は白、黄色、赤、黒があったが、最後まで黒字経営を夢みた男として、黒のロープを選んだ。レジで二九八〇円と消費税を払い、それを車のトランクに入れた。コンビニに立ち寄り、純白の肌着も買った。それに着替えて決行するつもりだった。
    場所はそこと決めていた。 自宅から少し離れた所に借りているガレージだ。
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著者 武沢 信行
発行所 がんばれ社長出版
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